ゴー宣DOJO

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切通理作
2012.5.27 23:49

片山さつき議員の陥穽

 皆さん、まだ間に合います!

 締め切りは平成24年5/30(水)必着。

 第26回ゴー宣道場『保守って何?ー自民党ならいいのか?ー』。

 

 開催は平成24年6月10日(日)午後1時から、民主党の田村謙治議員をゲストに招いての議論。

入場料は1000円。

参加希望の方は往復はがきに、『第26回参加希望』と明記、

さらに、

1. 氏名(同伴者がいる場合はその方の氏名と続柄・関係など)

2. 住所

3. 電話番号

4. 年齢

5. 職業(学生の方は学校名)

6. 募集を知った媒体

7. 応募の理由と道場への期待

返信はがきの宛名には、ご自分の氏名・住所をご記入の上、

152-8799

東京都目黒区目黒本町1-15-16 目黒郵便局・局留め

『ゴー宣道場』代表・小林よしのり、担当・岸端

まで、お送り下さい。

 

 自民党関係のホットな話題で言えば、片山さつき議員は、現在の生活保護が適正かどうかという問題提起のために、お笑いタレントの母親が生活保護の不正な支給を受けていたのではないかとされる問題を明らかにしようとしましたね。

 お笑いタレントはそれを受けて謝罪会見をし、不当に受け取った分を返還すると約束しました。


 この件に関しては現在ツイッターなどで多くの意見が出ていますが、大きく二つに意見が割れています。

 ひとつは、お笑いタレントに対する批判。もうひとつは、告発的行動をした側であるはずの片山さつき議員に対する批判です。


 人気者で、さぞやお金を稼いでいるであろうお笑いタレントのセコい態度に対する怒りと、生まれも育ちも恵まれている議員がそれを居丈高に叩こうとする態度への反感。

 そうした「嫉妬」の感情がどちらの批判のベースにも一部伺えます。


 しかし片山議員についての批判はそれだけには留まりません。


 政治家が、自らの政治的主張の根拠とするために、芸能人とはいえ一私人のプライベートを直接暴き、バッシングするなどということがあっていいのか。


 政治家が生活保護の不正支給を批判するならば、一足飛びに支給された側を叩くのではなく、行政がなぜそうしてしまったのかを明らかにすべきではないのか。

 

 ・・・・・・これらの批判は、理に適ったものと思います。


  先日の道場で、石原知事が都で尖閣諸島を買うと宣言したことに笹幸恵さんが違和感を口にしました。都知事が国を飛び越えて行動することへ思わず快哉を叫んでしまった私ですが、たしかにこういうことが常態化すればファシズムにつながることを笹さんの発言から学びました。

 

 今回の件も、問題の中身は違いますが、「越権の暴力」と「ポピュリズムに訴える力への過信」を感じます。

 お笑い芸人は放蕩すらもひとつの持ちネタになり得る存在です。政治家が、その適用のボーダーラインで一喜一憂している一般国民の困窮層とはおよそかけ離れた、一お笑い芸人の例を持ってして強引に生活保護全般の問題を語ろうとするのには、そもそも無理があります。


 しかし自分の儲けたお金を親にすら回さない芸能人への嫉妬の感情が高まることで、そこに一気にアピール出来るという目算があったのではないでしょうか。
 

  

 ポピュリズムに訴える・・・・・つまり民衆を扇動することと、政治が一緒になってしまう危険を感じないわけにはいきません。


 その片山議員は、やはり育ちが良すぎるのか、そういう自分すらも同じ国民の嫉妬の感情の対象になることは計算に入れてなかったのかもしれません。


 あわててテレビに緊急出演した彼女は、視聴者の前で涙を拭いてみせ、自分こそが被害者だという印象をつけようとしました。


 ここで片山議員は完全に「ミイラ取りがミイラになる」状態に陥ってしまったと思います。


 女優の熱演は演技でも本当に涙を流せますが、カメラに写るほどの涙の量を出せなかった片山議員は、発言の途中であえて、あふれてもいない涙を拭いてみせる仕草をして、そのハンケチがしばらく写るように止めたまんまで話すという、不自然かつ珍妙な行動をさらけだしました。

http://www.youtube.com/watch?v=4SaGDXI0w58

 

 

 そして、インターネットに流布される流言飛語をそのまま鵜呑みにしたのか、「お笑いタレントの仲間が自分の夫の会社を潰すとテレビで脅迫している」という虚偽の被害を訴えるに至りました。

 ポピュリズムに訴えるためには、自らがテレビで、お笑い芸人の芸にはもちろん及ばないレベルのパフォーマンスすら演じなければならない・・・・・その逆説を彼女は見事に演じてしまいました。


 
 まさに政治がポピュリズムと直結することの陥穽が象徴的に現われた事件であった気がしてなりません。


 ただ、インターネットでも、両者へのただの嫉妬ではなく、政治とポピュリズムの関係についてのリテラシー的見地からの批判が出たのは、健全なことだと思います。


 よき政治というものは、ただ民衆の心情に乗っかった(かに見える)ものではないのだということが、自覚されるいい機会になったのかもしれないし、また政治と我々の関係というものが、いま揺れ動いている真っ最中なのかもしれません。


  次回、第
26回ゴー宣道場『保守って何?ー自民党ならいいのか?ー』。

民衆の無意識を反映するのが「理想の政治(家)」なのか?

政治(家)に期待するものは何であるべきなのか?


 ・・・・・・改めて問い直す機会にもなればいいなと思います。

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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